5月10日に(公財)日本健康・栄養食品協会は、経営幹部の方々など企業関係者にお集まりいただき、5年ぶりにトップセミナーを開催しました。開会の挨拶で山東 昭子 会長は、「健康に寄与する食品業界の最大の団体として、これからも誇りを持ち、多くの会員企業が望む、行政や消費者とのパイプ役を引き続き担っていきたい」と挨拶しました。
消費者庁の新井ゆたか長官は、午前中の国会で討議されたばかりの景表法改正について情報提供されました。改正法のポイントとして、事業者の自主的な取組とその促進方法、違反行為に対する抑止力の強化、独禁法と同等の確約手続、さらにはステルスマーケティングの適正化を挙げました。今回の改正は、事業者にとって厳しいものに感じられることと思うが、早期の是正等の対応を行うことは、消費者のみならず、事業者の利益も確保することが目的だと話されました。
また2024年4月1日予定で、厚生労働省が行っている食品衛生基準業務が消費者庁に移管される件について説明され、80人弱の厚労省基準審査課職員が消費者庁に移る予定と話されました。残留農薬や放射性物質などの基準は、現状の消費者委員会とは別に、新たに「食品衛生基準審議会」を消費者庁に設置するとのことです。新井長官は、消費者行政として景表法の調査件数や課徴金額に目が行くが、それらがゼロになることが本来望ましい世界、そのための事業活動をお願いしたいと話されました。
最後には、農林水産省時代の被災地支援の経験談を交えながら、災害時こそ品質担保された「とろみ調整用食品」等の特別用途食品が重要であることをお話されました。
三菱総合研究所 理事長(第28代東京大学総長)の小宮山 宏 氏は、日本が資源不足、少子化、温暖化など多くの問題をもつ「課題先進国」であること、これらの課題解決のためには、地球が持続し豊かで、すべての人の自己実現を可能にする社会(=プラチナ社会)の実現に向けて活動することが重要であるとお話されました。
課題の一つであるCO2排出問題については、脱炭素社会を具体的に設計することが重要であること、その先駆けとなる実装実験として2002年の自宅新築時に複層ガラスや太陽光発電パネル、ヒートポンプ給湯機などを取り入れた小宮山エコハウス)を完成させたことなど、考えるだけでなく、実装や行動する重要性を説明されました。
また将来における課題解決の拠点として、次世代に必要な知識を日本を代表する講師陣が伝授する「超大学」を推進されていること、子供たちが体験や議論を通して新たな学問を創造する重要性、子供たちの輪に大学生チューターやシニアを入れ、昔の地域交流のような人間関係をつくると、グループが活気づくことなど、多様性のある社会の重要性等を説明されました。
厚生労働省の福島靖正医務技監からは、「厚生労働省における健康づくりの取り組み」として、社会運動として健康づくり運動から健康増進法に基づく健康日本21に至る経緯、また、次期国民健康づくりプランである「健康日本21(第三次)」について全体図や概念図を用いて、検討状況をご報告いただきました。特に新しい視点として女性の健康やICT(情報通信技術)などを取り入れ、健康づくりを加速させること、新たな目標として、睡眠時間の確保、COPDの死亡率の減少、社会環境の質の向上、骨粗しょう症健診受診率の向上などの追加が紹介されました。
さらに「いわゆる『健康食品』の安全確保に関する取り組み」として、指定成分等含有食品の新たな衛生管理、健康被害等の情報の届出、業界団体等との意見交換等について説明がありました。また国立健康・栄養研究所ウェブサイト「『健康食品』の安全性・有効性情報(HFNet)」リニューアル等についてご説明いただきました。
(公財)日本健康・栄養食品協会は、特別用途食品や保健機能食品、健康食品等に関する制度の普及や、品質・安全性担保等の面で顕著な成果を挙げた会員等を表彰しています。今年度は特別用途食品部門として「えん下困難者用分科会」が受賞されました。
「えん下困難者用分科会」は2013年度に発足以来、えん下困難者用のゼリー食品やとろみ調整用食品の許可基準の検討や申請に尽力され、2019年度には「とろみ調整用食品プロジェクト」を推進、企業間の連携により2023年3月末時点で、7社11製品が消費者庁許可を取得したことが功績として認められました。
本日は、歴史と信頼のある公益財団法人 日本健康栄養食品協会より賞をいただきましたこと、大変うれしく思います。今回受賞した「特別用途食品制度の活用に関する研究会−えん下困難者用食品分科会」の「とろみ調整用食品」は2018年4月に新設された規格基準型のカテゴリーです。
この制度の新設に当たっては業界要望に対し、消費者庁及び日健栄協の皆様のご尽力があり実現に至りました。新設していただいたからには、利用者の皆様の健康維持に寄与できるよう、申請数を増やし、許可品を多く輩出することが我々の使命です。そこで、いわゆるとろみ材を扱う主要メーカーが集まってプロジェクトチームを作り、申請マニュアルを共有し、企業間競争の垣根を超えた課題共有を行いました。
その結果、なんと新設から4年余りで7社11品目の表示許可品を輩出することができました。これは制度上、前例のない数字です。このような取り組みを評価いただいたことは、特別用途食品の申請予定企業にとって勇気づけられるイベントとなります。
本制度の活用に向け、業界団体、日本健康・栄養食品協会の皆様とともに活動を続け、病者をはじめとした消費者の皆様が食の楽しみを終身にわたって享受できる社会づくりに貢献したいと思います。本日は本当に有難うございました。
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